小説にみる明治・大正・昭和(戦前)の教育あれこれ

小説に描かれた明治・大正・昭和戦前の教育をあれこれ気ままに論じていきます。漱石『坊っちゃん』は「『坊っちゃん』に見る明治の中学校あれこれ」(https://sf63fs.hatenablog.com/)へ。

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

小林信彦「東京少年」その3  疎開生活の「日常」

穴の中での日常が始まった。 起床は五時半だ。海軍にいた教師にとって早起きは得意らしく、定刻五分前には大広間の奥の襖をあけて、「起床五分前!」 と叫び、やがて、「起床!おこるぞぉ」とつけ加えた。ただちに起きないと、おれは怒るぞ、と念を押すので…

小林信彦「東京少年」その2 集団疎開1日目

集団疎開に応じることが決まると、主人公は明治座で芝居を見たり、中華料理屋で豪華な「闇料理」を食べたりと、裕福な商家のお坊ちゃんらしいひとときの贅沢な日々を送り、出発の日を待っていました。 主人公たちが向かう疎開先は、埼玉県入間郡名栗村(現在…