小説にみる明治・大正・昭和(戦前)の教育あれこれ

小説に描かれた明治・大正・昭和戦前の教育をあれこれ気ままに論じていきます。漱石『坊っちゃん』は「『坊っちゃん』に見る明治の中学校あれこれ」(https://sf63fs.hatenablog.com/)へ。

2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『白い壁』その6(おわりに) 本庄陸男34年の軌跡

本作品の作中時間は、昭和9年(1934)頃と思われますが、既に作者の本庄陸男は教員の地位を免職になっており、プロレタリア文学の作家として活動していました。 教員組合運動からプロレタリア文学へと向かう過程を中心に、改めて略年譜をもとに彼の34年の人…

コラム4 学校掃除 その2

■ 世界の学校掃除 昭和50年(1975)といえば、47年も前のことになりますが、広島大学教育学部の沖原豊教授(当時、後に第7代学長)の比較教育学研究室が共同研究「各国の学校掃除に関する比較研究」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jces1975/1977/3/…

コラム4 学校掃除 その1

■ コロナ禍で学校の掃除にも変化が・・・・ 長引くコロナ禍のなか、学校現場の教育活動に大きな変化が生じているとの報道に接することがよくあります。そんな中に、日々児童生徒たちが行っている掃除(清掃)にも、その影響が及んでいるというネットニュースがあ…

本庄陸男『白い壁』その5 健全な精神は健全な肉体に宿る??

昇汞水(しょうこうすい)に手を浸しそれを叮嚀(ていねい)に拭いた学校医は、椅子にふんぞりかえるとその顎で子供を呼んだ。素っ裸の子供は見るからに身体を硬直させて医師の前に立った。彼はまず頭を一瞥して「白癬(はくせん)」と言った。それから胸を…

本庄陸男「白い壁」その4 「劣等児」・「低能児」と知能検査

それほど本当のことを何の怖気もなくぱっぱっと言ってしまう子供たちから、受持教師の杉本は低能児という烙印(らくいん)を抹殺したいとあせるのであった。もしこの小学校の特殊施設として誇っている智能測定が、まことに科学的であるというならば、子供の…

本庄陸男『白い壁』その3 「修身」の授業で・・・

月曜朝の第一時間目には、どの教室にも一様に修身科がおかれていた。びっしり詰った十三坪何勺(しゃく)かの四角な教室からは、たからかな教育勅語の斉唱が廊下に溢れ出た。躾(しつけ)のいい組と云われている子供たちの声が、いたって単調なリズムを刻み…