小説にみる明治・大正・昭和(戦前)の教育あれこれ

小説に描かれた明治・大正・昭和戦前の教育をあれこれ気ままに論じていきます。漱石『坊っちゃん』は「『坊っちゃん』に見る明治の中学校あれこれ」(https://sf63fs.hatenablog.com/)へ。

2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

谷崎潤一郎「小さな王国」その4  ヘルバルト式の管理教育

「新編修身教典 尋常小学校巻1第1課」明治33年・1900、普及舎(近代書誌・画像データベース新編」より) 或る日の朝、修身の時間に、貝島が二宮尊徳の講話を聞かせたことがあった。いつも教壇に立つ時の彼は、極く打ち解けた、慈愛に富んだ態度を示して、…

谷崎潤一郎「小さな王国」その3 修身の時間に二宮尊徳の話

彼が教職に就いたD小学校は、M市の北の町はずれにあって、運動場の後ろの方には例の桑畑が波打って居た。彼は日々、教室の窓から晴れやかな田園の景色を望み、遠く、紫色に霞んで居るA山の山の襞に見惚れながら、伸び伸びしとした心持ちで生徒達を教えて…

谷崎潤一郎「小さな王国」その2  大正期・小学校教師受難の時代

【作者】谷崎潤一郎 大正2年(1913) 27歳の頃 (明治19~昭和40年・1886~1965)東京・日本橋生れ。東大国文科中退。在学中より創作を始め、同人雑誌「新思潮」(第二次)を創刊。同誌に発表した「刺青」などの作品が高く評価され作家に。当初は西欧的なス…

谷崎潤一郎『小さな王国』その1 谷崎の小中学校時代

本題に入る前に、作者の経歴を見ていると、その学校歴にずいぶん興味深いところがありますので、まずはそちらの方から見ていくことにします。 ※略年譜は『新潮日本文学アルバム 谷崎潤一郎』及び「古谷野敦公式ホームページ・谷崎潤一郎詳細年譜」(http://a…