2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧
「あたいはね、先生――お弁当持ってきたよ、あたいん家(ち)ではね、昨日……だか何日だか、区役所からこんなにお米を買ってきてさ、そいでねえ、ねえ先生――」「そうか――」と杉本は答え、まだまだ何か話したげな子供を促して階段を登るのであった。「またあと…
■ 「昇降口」 ーその始まりはー 今でも、ほとんどの小・中・高校では、来客や教職員用の玄関とは別に、児童生徒用には昇降口という出入り口が設けられており、登下校の際にはそこで靴を履き替えることになっています。 歴史をたどってみると、近代公教育の制…
【作品】 短編小説。「改造」昭和九年五月号。昭和十年六月、ナウカ社刊の同名の単行本に収録。場所は東京深川の細民街の小学校。杉本は四年生の特殊児童四〇名の担任教師。母親にコルク削りを強要されて学校に来ない富次、母なし子の武夫、二度原級留置きの…
■ なくなった「座高」測定 平成26年(2014)4月に学校保健安全法施行規則の一部が改正され、学校健康診断の検査項目から「座高」(昭和12年・1937より実施)と「寄生虫卵の有無」(昭和33年・1958より実施)が削除されました。 文部科学省では座高測定につい…
「なんだか。此の頃ペッカァは一向気がなくなったじゃねえか。そうしていやに隠居臭くなって。へえちっと耄(ぼ)けたかな。」 そう云う生徒達の言葉通り、先生は明らかに耄碌(もうろく)し出した。その顔や手には著しく皺(しわ)が寄り、容貌や様子は、ま…
名作でたどる明治の教育あれこれ: 文豪の描いた学校・教師・児童生徒 作者:藤原重彦 パブフル Amazon それにつづいて、夏その冷たい湖水で中学生達の水泳が始まるようになった。と、それまで水では金槌(かなづち)だった彼が、自分の半分も年下の少年達の中…