小説にみる明治・大正・昭和(戦前)の教育あれこれ

小説に描かれた明治・大正・昭和戦前の教育をあれこれ気ままに論じていきます。漱石『坊っちゃん』は「『坊っちゃん』に見る明治の中学校あれこれ」(https://sf63fs.hatenablog.com/)へ。

2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

伊藤整『若い詩人の肖像』④ 「学閥」・「吉田惟孝」

新井豊太郎は私に言った。「ここは広島閥でねえ。いい所はメイケイ会(東京高等師範学校の会)が先に地の利を占めてしまっているものだから、広島は君、九州とか四国とか北海道、朝鮮なんかに根を張っているんだよ」 それは私にとって重要な職業教育であった…

伊藤整『若い詩人の肖像』③ 「英語教師」

私が数え年二十一歳で、三年制の小樽高等商業学校を卒業したのは、大正十四年、一九二五年の三月であった。(中略) この新設中学校*は多額納税議員をしているこの市の金持ちが、土地と建築費を寄付して創設され、校舎はこの雪解を待って建て始める予定にな…

伊藤整『若い詩人の肖像』② 「軍事教練」その2

私の入る前の年、全国の高等学校や専門学校に軍事教練が行われることになった。その年は、第一次世界戦争が終わってから四年目に当たり、世界の大国の間には軍事制限の条約が結ばれていた。世界はもう戦争をする必要がなくなった。やがて軍備は完全に撤廃さ…

趣味あれこれ 「第324回西明石・浪漫笑」

「ひと月経つの早いね!」 この落語会を教えてくれた落語通のIさんによく言う科白です。 昨夜も開演15分前に到着し、お店(「HANAZONO」という酒屋さん)に入ると、常連さんたち数名はお店の一角、「立ち飲み」ならぬ「座り飲み」コーナーで軽く…

伊藤整『若い詩人の肖像』①「軍事教練」その1

私の入る前の年、全国の高等学校や専門学校に軍事教練が行われることになった。その年は、第一次世界戦争が終わってから四年目に当たり、世界の大国の間には軍事制限の条約が結ばれていた。世界はもう戦争をする必要がなくなった。やがて軍備は完全に撤廃さ…

島崎藤村『夜明け前』① 「上等・下等小学校」

一方にはまた、学事掛りとしても、村の万福寺の横手に仮校舎の普請の落成するまで、さしあたり寺内を仮教場にあて、従来寺小屋を開いていた松雲和尚(しょううんおしょう)を相手にして、できるだけ村の子供の世話もしなければならないからであった。子弟の…