小説にみる明治・大正・昭和(戦前)の教育あれこれ

小説に描かれた明治・大正・昭和戦前の教育をあれこれ気ままに論じていきます。漱石『坊っちゃん』は「『坊っちゃん』に見る明治の中学校あれこれ」(https://sf63fs.hatenablog.com/)へ。

2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

山本有三『路傍の石』④ 「私立大学の専門部」

日給が取れるようになると、彼は前の学校の近くにある、私立大学の商科の夜学専門部にはいった。(中略) ところが、前の学校の近くまで行くと。門の前は学生で黒くなっていた。ビール箱の上に乗って、演説している学生もあった。吾一は思わず足をとどめた。…

山本有三『路傍の石』③ 「苦学生」

「大きくなったもんだなあ。-ところで、学校はどうした。」「学校へなんか、とても行けません。」「夜学にも行っていないのか。」「ええ。行きたいとは思ってるんですけれど、まだ小遣いだけで、とても給料をもらえるようになれないもんですから。」(中略…

山本有三『路傍の石』② 「中学へ進むには・・・・」

ねえ、おっかさん・・・・」と、口を切った。「なに。ー」「ねえ、・・・・やっておくれよ。-いいだろう。」中学のことは今に始まったことではない。こう言えば、おっかさんには、すぐにわかると思っていた。しかし、おっかさんは、「どこへ行くんです。」と、そっ…

山本有三『路傍の石』① 「高等小学校」

我々年代の者には懐かしく思い出される作品ですが、若い人たちにはなじみがないかもしれませんので、簡単なあらすじを引用しておきます。 愛川吾一は貧しい家庭に育ち、小学校を出ると呉服屋へ奉公に出される。父・庄吾は武士だった昔の習慣からか働くことを…

夏目漱石『三四郎』④ 「帝大の運動会」

きょうは昼から大学の陸上運動会を見に行く気である。 三四郎は元来あまり運動好きではない。国にいるとき兎狩(うさぎがり)を二、三度したことがある。それから高等学校の端艇競漕(ボートきょうそう)の時に旗振りの役を勤めたことがある。その時青と赤と…

夏目漱石『三四郎』③ 「選科生」

昼飯を食いに下宿へ帰ろうと思ったら、きのうポンチ絵をかいた男が来て、おいおいと言いながら、本郷の通りの淀見軒(よどみけん)という所に引っ張って行って、ライスカレーを食わした。淀見軒という所は店で果物(くだもの)を売っている。新しい普請であ…

第323回 西明石落語会「浪漫笑」

昨日、第二金曜日は恒例の「西明石・浪漫笑」 普段は車で行くのですが、今回は終演後、バーベキューで打ち上げとあってJRで行きました。(帰りは久しぶりの終電でした) ⬛️ 演 目 ○桂小留さん 「ん廻し」 ○桂歌之助さん「蛇含草」 ○桂春雨さん「たちきれ」 …

夏目漱石『三四郎』② 「おじいさんの西洋人教師」

それから約十日ばかりたってから、ようやく講義が始まった。三四郎がはじめて教室へはいって、ほかの学生といっしょに先生の来るのを待っていた時の心持ちはじつに殊勝(しゅしょう)なものであった。神主(かんぬし)が装束(しょうぞく)を着けて、これから…

夏目漱石『三四郎』① 「9月入学」

学年は九月十一日に始まった。三四郎は正直に午前十時半ごろ学校へ行ってみたが、玄関前の掲示場に講義の時間割りがあるばかりで学生は一人ひとりもいない。自分の聞くべき分だけを手帳に書きとめて、それから事務室へ寄ったら、さすがに事務員だけは出てい…