小説にみる明治・大正・昭和(戦前)の教育あれこれ

小説に描かれた明治・大正・昭和戦前の教育をあれこれ気ままに論じていきます。漱石『坊っちゃん』は「『坊っちゃん』に見る明治の中学校あれこれ」(https://sf63fs.hatenablog.com/)へ。

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

コラム5 明治・大正時代の「夏休み」その1

田山花袋『田舎教師』初版本 口絵 ■ 「夏休み」はいつ頃に始まったのか? 先日の7月21日(木)に全国のほとんどの小中高等学校が「夏休み」に入りました。2022年度の場合、公立学校では8月31日(水)までの42日間というが最多であるということです。 (https…

石川啄木「雲は天才である」その3 「教授細目」と「教案」

※有佐一郎『学級文庫シリーズ ; 4・5年生 石川啄木 : 薄幸の歌人』(日本書房、1957年)の挿絵 ある日のこと、主人公の代用教員・新田耕助は自作の「校歌」を子供たちに勝手に歌わせた一件で、校長と首座訓導の古山から注意を受けました。 古山が先づ口を切…

石川啄木『雲は天才である』その2 「校歌」

詳しく説明すれば、実に詰らぬ話であるが、問題は斯うである。二三日以前、自分は不図した転機(はずみ)から思付いて、このS――村小学校の生徒をして日常朗唱せしむべき、云はゞ校歌といつた様な性質の一歌詞を作り、そして作曲した。作曲して見たのが此時…

石川啄木『雲は天才である』その1 「日本一の代用教員」

六月三十日、S――村尋常高等小学校の職員室では、今しも壁の掛時計が平常(いつも)の如く極めて活気のない懶(ものう)げな悲鳴をあげて、――恐らく此時計までが学校教師の単調なる生活に感化されたのであらう、――午後の第三時を報じた。大方今は既(はや)…